2008年2月18日月曜日

しまった

先週金曜の夜のことです。

ご飯を食べようと出かけたホテルのレストランでの話。

時間も遅かったためか、ガラガラのレストランには私の他に2、3人いるだけでした。ここではいつも、仲良くなったウエイターの人たちとフランス語の練習をしたりしています(といってもいつも同じことを言ってるだけですが・・・)。

目が合ったやさしそうなおじいさん(イやな予感?笑)。

フランス語の挨拶をウエイターの人と交わす私になにやらフランス語で話しかけてくるではありませんか。「ボンスワ、サ・ヴァ?」までは良いんです。ただ私はそこからあまり進歩していません。もちろんその後はちんぷんかんぷん。だから決まって「フガンセ・ジュネセパー」・・・。

多少の英語はしゃべれるみたい。こんな夜遅くに一人でも笑顔の子がいて良かったよ。と言っています。私は立ったまま、彼は座ったまま会話が長引いたのですが、ここで分かったことは、彼はスイス人の国際弁護士だそうで、今回は仕事でアルジェリアを訪れたそう。そして翌日スイスに戻るらしいのです。始めは気付かなかったようですが、どうやら私がベリーダンサーだと分かってしまいました。確かに私も踊っている最中に、何度かそのスイス人おじいさんを見かけた覚えはしていたのですが。

最初はもちろん遠慮していた「一緒に座りませんか?」。私はもう自分の席があるから、と一緒に座る気なんかもちろんなかったのですが、その彼の携帯電話に同じホテルにいるイタリア人女性から電話が入ったそう。彼女も明日アルジェリアを発つんだ。今からさよならの挨拶をしに来るって、とおじいさん。彼女も一緒だからとまた座るよう促される。やってきたそのイタリア人女性を見たらなんとなくホッとしたのか、彼女もいるなら、ではまあご一緒させてもらおうかと席に着く。もちろんおじいさんはヨーロピアン。アラブ人の感覚とは違う感覚で接してしまったのか、よく考えたらこのイタリア人女性が長居をする訳がない・・・と言うことは彼女が去ったら私はこのおじいさまと二人きり。なんだかまずいなあと思っていてもだからといってすぐに席を立ち去るのも無礼なこと。この場は何とか会話を探しつつ健全な対応を取る。しかもおじいさん、私にワインを注いでくれるではないですか。全然口をつけないのも悪いので、1、2口飲みましたが、その後色んな後悔が押し寄せてきたのです。

まず、誘われても一緒に座ってはいけなかったこと。その場でお食事をいただきつつエージェントオフィスでサンディーが言ったことを思い出す。お客さんと出かけたりしないこと。誤解を招きそうなことはなるべく避けること。ここだけの話ですが、ベリーダンサーたるもの、アラブの国では必ずしも良いイメージではないんです。ある人に言わせると、こちらで言うベリーダンサーは女神的な存在であるという考えもあり、その女神は誰とでもお出かけしたりなんかしたらいけないんです。女神はお酒を飲まない、タバコを吸わない、トイレにも行かない。と言うのは冗談ですが、とまあ色々気をつけるべきことは山ほどあるのです。

とあるダンサー友達とのチャット。彼女は先日かなり参った様子で話をしていました。彼女の派遣先のホテルにて、レストランのシェフと仲良くなったそう。そのシェフは、ご飯時にやってくる彼女に対し、いつも大変親切にしてくれていたらしいのです。ただそれだけなのに、気付けば訳の分からぬうわさが立ち込めていたとの事。要するに、そのシェフが彼女と仲良くなったことを理由に、あることないことを言いふらしていたらしく、彼女が否定すればするほど回りは信じてくれないという、嫌なシチュエーションに発展してしまっていたそうなんです。

マネージャーに言ってみれば?と諭す私に、彼女はマネージャーもシェフの言葉を信じていてもうどうしようもないとの事。解決法を見つけられず、困った私はそれなら真実は一つなんだから、相手が何を信じようが、どう思おうが、私たちにはどうしようもないのでは?と言ってみましたが、やはり根も葉もないうわさから出来上がる嘘の名声で今後の仕事に支障が出るのは私たちだって少しも望んではいないところ。だからといって、愛想良くしなければ「あいつは態度が悪い」、などとまたおかしな方向にうわさが行く可能性だって否定出来ない・・・。もうそろそろ終わりの契約だから、これ以上おかしなことにならないことを「インシャアッラー(Let's hope god)」と会話を終えたのですが、アラブの国では女性の発言にはあまり価値をみなさないのか、こんな変なことに私たちはよく削らなくていい神経を削ったりすることもあるのです。しかもその彼女には、もう一人同じようなうわさを立てるホテルでの男性客がいたそうで、そんな状況に対してクールに対応しなければいけない彼女をかわいそうにも思い、同情と共に全てのダンサーがそのような要らぬ心配にエネルギーを奪われることもある事実にもどかしさをもおぼえます。

以下は、去年のレバノンでの私の体験談。おんなじようなことはどこにでもあるのでしょうか。

踊っていたレバノンのホテルの同僚Wから聞いた話。ベイルートで夏の間最もホットな場所と知られるお洒落なオープンバー、Skybar。ホテルのレストランで踊っている私を見たことのあるもう一人の同僚Tの友達=お客さんがある日私をSkybarで見かけたそう。友達と、知り合って友達になった男の子とSkybarに行ったその日、人目なんか気にするはずもなく(というより、気にする必要なんかこれっぽっちもないでしょ、悪いことしてるわけじゃないんだから)ただ単に時を楽しんでいた私達。

なんでそういう発想に結びつくのかと思うぐらいバカらしい発想。あの子=私はお金目当てで誰とでも出かけるの?って。いい加減ほっとこうよ、私のことは。 飲み屋さんで私が男の子と一緒にいたからって何でそうなるのか不思議なほどここの国の人たちはうわさ好き(正しかろうがそうじゃなかろうが)。うわさ好きだけならいいのだけれど、ここの国民のほとんどの男性は女性に対してあまりポジティブな考えを持っていないようで、特に外国人女性に対してか、仮に友達が男性だったとして一緒にいたとしたら自動的に何らかの関係を持っていると思う人が多いよう。

そんな感覚をこれっぽっちも持ち合わせていない私や欧米の友達はバカバカしいと思いつつも人から受ける誤解でたまに傷つくことも(というより呆れることも)。本当ではない嫌な名声だけは避けたいものの、バカバカしくて気にしてられないところもたくさんあります。もちろん皆が皆そういう考えを持っているわけではない訳で、本当に語り合える人とは偽りではない友人関係を築けたとは思っていますが、あまりにもばかばかしくて笑ってしまうことが満載です。

踊っていたホテルから全然遠い場所にある私のエージェントオフィス近くのスーパーで買い物をしていたある日。「あれ、君、あのホテルで踊ってる子だよね?」って。ここは「はい」と言うべきなのか、「いいえ」というべきなのか…でも嘘つく必要もないし…と思い「はい」と。 知らない人からも、昨日どこそこに行った?一昨日だれだれと一緒だった?…って何で知ってんの?というくらい人は見てる!国も小さければ人口も少ないわけで、しかも現在レバノンに住むレバノン人の全人口は情勢が不安定なことから外国に移住して住んでいるレバノン人1,600万人の4分の1の400万人。誰かと誰かは直接、またはそのまた誰かを通して知り合いだったりすることがとっても多いのです。

そんな経験があったことを思い出し、ダンサー友達にその話をしてみる私。でも幸いだったのは、私の同僚Wは私のことをきちんと分かってくれていて、彼女はそんな子ではない、ときちんと説明してTの考えを改め直してくれたこと。真実は一つな訳で、他人がどう思おうが、どうでも良いこと、と思いつつやはり人間なるべくなら良くないうわさは避けたいものです。

そうそう、話は戻りますが、そのスイス人のおじいさん、話をしていると何故か話題はどんどんマッサージの方向へ。そういえば一度でしたが踊っている最中に誰かが私にマッサージする?って聞いてきたことがあったよな、と。何たる質問じゃと思い、するわけないでしょ、と答えたことを思い出す。もしかしたらこの人がその何たる質問をしたのでは、と一緒に座ったことの後悔がどんどん最高潮に達する傍ら、結局あまり悪い人ではなかったのかな、と思いレストランを後にする私におじいさん、君のお部屋はどこだい?って。悪いけど教えらんないよ!と言うとこれまたじいさん、いやあ、もしかしたら近所かもしれないと思って聞いてみただけだよ、と罰の悪そうな顔。そうだね、近所かも知れないね、と答えてその場を後にした。おじいさん、今度アルジェリアに戻ってきたら私を観光に連れてってあげると言うておったし私は一人であまり出かける機会には見舞われないものの、お誘いを受けてもお断りだな、とつくづく思うのでした。

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