2008年5月5日月曜日

カスバの女

前日、ホテルの友達のマディナが私に声を掛ける。

「明日用事ある?」

「いや、別にないよ。」

「じゃあ11時ごろ電話するね。アルジェに行くかもしれないから。」

出かける機会があればほぼ毎回イエスという私。
彼女の休みが月曜日と火曜日なのは知っている。

それなら、と早起き(?)をして朝食を済ませた私は、携帯に目をやる。
11時。
11時半。
12時。
・・・鳴らない。

こちらの人は約束を約束として考えない性質があるらしい。それはアルジェリア人だけではなくレバノン人も同様(もしくはより悪いかも)なのだから。

まあいいや。当てにする私のほうが悪かった。過去に何度もそんな経験がある私はもうあまり気にしない。起こることは起こるし、起こらないことは起こらない。ただそれだけのこと。我ながら大人になった(?)と思う今日この頃。特に悪い意味はないのだけれど、こういう国のこういう国民を相手にじたばたしても何も始まらないのはレバノンで嫌というほど学んだ私。

要するに今日はないんだな、と判断。
・・・すると12時15分。知らない番号から着信あり。
出てみるとマディナ。
お母さんが迎えに行くから5分で出ておいて、と言っている。ってあなたもうちょっと時間頂戴よ。

私なりに急いで10分。ホテルの入り口に行ってみるが、そこにお母様の姿は・・・ない。
しょうがないので待ってみること10分。そこにやってきたルノーを運転するお母さん。
おお、上出来。今回の待ち時間はそんなに長くない(笑)。いつものようにローカル語とフランス語をハチャメチャに混ぜた挨拶を交わし車に乗り込む私。

家で待機していたマディナと彼女のおばさんをピックアップしてアルジェめがけ高速をかっ飛ばすお母さん。この時点で私、どこに行くのかも分かっていない。

なんだか狭い路地をぐるぐる行くうちにマーケットらしい通りに出くわす。だからカスバの道路は狭くて嫌なのよね、とマディナ母。カスバ?そうか、今日はカスバに来たのね。これが、あのカスバ。

以前、マディナはおじさんがカスバに住んでいるから今度連れて行ってあげるね、とは言ってくれたものの本当に連れて行ってくれるとは何とも感激である。
世界遺産にも登録されているアルジェのカスバとは・・・

「本来の意味でのカスバとは、オスマン帝国領下の16世紀において、アルジェに建てられた城塞のこと  である。この城塞と海岸線と起伏のある地形に囲まれた一帯で人口が増加し、アルジェの旧市街が形成された。そして時代が下ると、この旧市街自体のことも「カスバ」と呼ばれるようになったのである。カスバには宮殿やモスクは残っているが、植民地時代の残滓は大部分が姿を消している。

カスバの魅力は、高低差118mにも及ぶ起伏に富んだ地形そのものと、そこを縫うようにして伸びる、在りし日の謎と神秘に満ちたアルジェへいざなう曲がりくねった細い路地、そしてそこに建てられた家の外観や内部の特色などによって構成されている。アルジェの家は家々に囲まれた泉のある四角い中庭に通じているのが特徴的である。

カスバの高いところは急勾配になっているので、路地のほとんどが階段状になっている。専門家たちは、何世紀にも渡って互に支えあうように、そしてもつれ合うようにして建っている家々が織りなす建築上の奇観が、この急勾配の土地の上に作り上げられてきたことに驚嘆の色を隠さない。

本来の中心部は美しいもので、かつてはムーア人都市アル=ジャザイル(アルジェのアラビア語名称)に、「アルジェ=ラ=ブランシュ」(白き都アルジェ)のあだ名をもたらした。しかし、現在のカスバは崩壊の危機に直面している。海から、あるいはテラスからカスバを眺めれば、まだ十分に美しいものである。しかし、実際に路地を歩いてみれば、その悲痛なさまが明らかである。構造上、ある家が崩れると、それと折り重なっている家々もドミノ倒しのように倒壊の危機にさらされるのである。」

面倒なので、上記はWikipediaを使ってまたそのまま引用させていただきました。以下、URLです。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%83%90

アルジェの街中は、だいたいどこも路上駐車。そしてその路上駐車を仕切るお兄ちゃんが道のいたるところで車に指示を出す。空きはない?というマディナ母にお兄ちゃん、あそこが空いてるよ、と指を差す。アルジェリアで走っている車はほぼ全てマニュアル車。坂道の多いこの町での運転はさぞかし大変なのではと思うのだが、住んでる人たちにとってはもう慣れたもの。・・・と思いきや、バックで縦列駐車をするマディナ母、指示をするお兄ちゃん、ヤーラ、ヤーラ(・・と言っていると思われる。ちなみにyallaとはアラビア語でlet's goの意味)、ガシャン。OK!・・・ってOK!じゃないでしょ、OK!じゃ。よく見かけます、こういう光景。

地元の、しかもカスバの市場。今日も面白いものをいくつか発見。
シャネルのマークがいたるところに入っているアバヤ。ベルサーチのマークがデザインとしてなされているアバヤ。グッチのアバヤ。そう、これらはもちろん全て偽者。こりゃあ面白い、と写真を撮ろうとバカな質問。撮ってもいいですか?答えはダメー。日本人なんだからいーじゃーん。と言ってみるがダメ。理由は?写真に撮って日本でデザインを真似されたら困る、って。・・・真似、しないよ・・・だいたいアバヤなんて作っても売れない・・・。今度写真を撮るときは、言わずに撮ろうと心に決めた私。そして今度「ベルサーチの」アバヤを買おうかな、とひそかに思ったりもしてみる。
ちなみにアバヤとは、イスラム国家の女性(国にも文化にもよるとは思いますが)たちが外出する際体の線を見せないように上から羽織る羽織もの。日本では売れない、と書いてハタと思う。ベリーダンスをする人の人口が増えているのであればアバヤが売れるようになるのも時間の問題・・・。衣装の輸入と平行して考えてみるのも悪くないかも、と上で言ったことは取り下げます。アバヤの込み入った話は今度のエントリーで。

マディナ母が吟味している赤ちゃん用の毛布。可愛いのだけれどケースにはよく見ると「Mode in Korea」と書いてある。モード・イン・コリアって何だ?韓国での流儀?おかしい。やっぱりおかしい。

買い物後、マディナのおじさんの家に向かうべく、カスバの街中を入っていく。

狭い段々の路地。古びた石畳。
上を見上げると、窓からぶら下がる洗濯物。あちらからこちらに引っ張られている電線。
悪ガキそうな男の子たち。
薄暗い、小さな入り口。50センチはあるであろう階段の1段。木があったり、タイルであったり。
ところどころ差してくる日差し。全てが継ぎ接ぎのように思われる、それでいて一体化した建物。いや、その継ぎ接ぎが折り重なって出来た街全体。訪ねたお宅は最上階(別名ペントハウス?笑)の一角。
おじさんは仕事でいないけれど、おばさんと、7歳の男の子、5歳の女の子が、その部屋にいた。お茶を出してくれたり、その間のやり取りを見ていると、薄々気が付いてはいたけれど、私のホテルの部屋よりも狭いそのスペースに家族4人、暮らしていることを悟る。他には小さなキッチンだけ。そこでご飯を食べれば、寝起きもする。テレビも置いてあれば、冷蔵庫もある。子供用のオモチャなんて、何一つない。何とも不思議な気分に陥ったけれど、子供たちの屈託のない笑顔を見たら、こういうのもいいのかもしれない、と、思った。
ちなみに、私は存じなかったのだけれど、「カスバの女」という歌があるらしい。

キム・ヨンジャさんが歌ってるバージョン

エト邦枝さんが歌ってるバージョン

帰り道、ラッシュと重なってしまった時間帯。マディナ母、数メートル行っては止まってしまう車の流れに毎回サイドブレーキをひいて坂道発進。隣の車と競り合って、絶対、譲らない(笑)。強し、マディナ母。

ちょっと疲れたかも、と思いつつも、カスバからの帰り、シェラトンから近いマディナのお家へお邪魔する。彼女の妹の結婚式のビデオをつけてくれる。面白いのだけれど今の私には少し辛い(疲れで)。今日だって今から帰ってお仕事が・・・。でもここは頑張って一生懸命おだてる私(本当にきれいだしビデオの質も良く、エンターテイメントも最高)。今日はぎりぎりにホテルに戻ることになるだろうな、と時計を見ると午後7時。

が、そこからが集中どころ。以前シェラトンで踊っていたウクライナ人(と聞いています)のジュリアナ(ちなみに彼女は私と同じエージェンシーではないようです)が、1年間シェラトンにいたことも聞いていたし、契約が終了してからその1年後、マディナの妹の結婚式の為にわざわざ来てくれたということだって聞いていた話。契約期間はその人の実力に比例するわけでも何でもありませんが、そのビデオの彼女の踊りを見て、納得。素直に、もっと見たい、と。

こういう職業についていると、多少なりともライバル心というものは捨てきれない部分があるとは思うところ。その上私はお世辞を言わない。でも本当に感動した踊りを見たらそう表現するし、素晴らしいダンスをする人は、ためらわずお手本にする。幸い私の周りには素晴らしいダンスをするダンサーが山といてお互いに刺激を与えられる環境にいるとは思っていても、お互い各国で踊っていればその人たちを生で見る機会は中々ないもの。
正直この頃、少しどうにかしたいな、と思っていたそんな時に受けたとても良い刺激。あなたのこと知らないけど、ジュリアナ、今日はありがとう。結局ホテルに戻ったのは8時PM。いつものルーティーンの工程はいくつもはしょらざるを得なかったけれど、今日の収穫は、とてつもなく大きかった!と思われる。

カスバの女。

カスバの女たち。

カスバに行った女。

いや、今日は カスバに行った女たち。


マディナ母。ザッハ!xxx

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