2009年1月26日月曜日

アフリカの母

彼女の名前はアナと言う。
アフリカは、タンザニアからやって来た。
ここアルジェリアには早5年間もの滞在。

旦那さん(ホテル職員)の仕事の都合でやってきたその彼女。
私が彼女と知り合ったきっかけは、去年11月に一緒にフランス語のクラスに行き始めるようになったから。

タンザニアではスワヒリ語、英語を公用語として話す。
すなわち日本人同様(私ね)、フランス語には馴染みがない国民なのである。
要するにここアルジェリアのフランス語の教室で日本人とタンザニア人が同席するのは半ば必然的?でもある。

さてこの彼女、定期的に会い始めてから何度目かに、ふと、ぎこちない人だな、と思ったことがある。それまでそれに気付かない人(私)もどうかと思うけれど、もう1人一緒にフランス語の教室に通うフィリピン人マダム(と言っても私より年下)から聞いたところによると、アナは、何年か前から半身不随になり、今でも体の右側はほとんど言うことをきかない状態らしい。と言うより、言われるまで気付かない私、いつからこんなに鈍くなったんだ?とも思う。が、気付かなかったひとつの理由として考えられるのは、アナのパワーにある。

英語を話すといっても、やはり国語はスワヒリ語、発音も含め母国語ではない彼女の英語は非常に分かりずらい。文法もめちゃくちゃで、言葉も適当なものが思い浮かばないから、同じことをトーンを変えて繰り返す。そう、絶対に聞き手が首を縦に振り、「分かった」サインを送るまで。

でも心優しいアナ、フランス語の教室の帰り、物乞いをしている人を見つければ必ずといっていいほど持っているコインを渡してあげる。彼女なりの思いがあって、どうして彼女は物乞いにお金をあげるのか、を延々と諭してくれるのだが、それがどうも良く分からない。大体こう言いたいのだろう、と検討をつけて首を縦に振るフィリピン人マダムと私。

異邦人の私達、地元のアルジェリア人にしてみたらどうしても目立つ存在。よく言えばフレンドリー、悪く言えばうっとおしい存在にもなりうる地元アルジェリア人。街を1ブロック歩くだけでも至るところから視線を感じる。そして「ニーハオ」と声を掛けられるのが通常(私なら)。街を暇そうにほっつき歩いている、これがほぼ全て男性なのだから、こっちとしては威圧感を感じても仕方がない。

けれど不思議なことに、このアナと歩いていると、そんなうっとおしさはどこかへ行ってしまう気持ちになるのか、それともそういう視線が向けられないのか、はたまたアナのおしゃべりに気を取られるのか、どっちかと言うとうっとおしさから逃れるために視線をなるべく落として歩くようにしている私(もしくはサングラスを掛ける)にとっては判断がつかないけれど、何だか守られている環境にいるようにさえも思う。

そしてそれは彼女の人柄でもあろう、街行く人、目が合えば皆必ず「ボンジュール・マダム」と挨拶を交わす(いや、目が合わなくても道の向こうの方からアナを見かけると叫んで挨拶する人も、たまにいる)。フランス語の学校がある建物の中に連なるお店の人たちはもとより、そこから近くのピザ屋の女主人、電話屋さんのおじさん、隠れ両替商の靴屋さん、駐車を管理するお兄さん、とリストは延々と続く。そう、5年もここにいる彼女は、もう街のたくさんの人々と知り合いなのである。関わったら話が長くなるであろう、うっとおしいと思われる人たちにも自分から挨拶、頭を突っ込んで話し始める。そう、英語と同様めちゃくちゃなフランス語とアラビア語で。

彼女の話はもっぱら
ボンジュール、サヴァ?(やあ、元気?仏)
(相手の返事を聞いて)ハムドゥッラー(Thank god/神に感謝 亜)、
ビヤン(good 仏)
プルコワ(why? 仏)
マケーシュ(ない 亜)、
マーレーッシュ(問題ない 亜)、
インッシャッラー(神の思し召し 亜)、
コンビヤン(いくら?仏)、
サイエー(終わり 仏)、
コムサ(このように 仏)
と、かわいらしいが大袈裟なジェスチャーなどで成り立つ。

話し好きなのは確か。これだけのボキャブラリでこれでもかと話しを続けるアナ。これにはさすがのアルジェリア人も参っているよう。普段私なんかはアルジェリア人の話し好きには参ったをあげる状況なのだけど、そんなアルジェリア人を参らせるそのパワー、なんだか小気味よい。

左ハンドルのマニュアル車を、左腕一本で運転。料理だってかたてでやりくり。現在3人の可愛い子供達がいるのだけれど、数年前に子供を2人も亡くしているらしい。たまには涙を浮かべて昔の話をするけれど、それでも現状には文句ひとつ言わないアナ。

アナとの会話は、お互いカタコト、でもフランス語の方が良く通じ合ったりする、そんなこの頃。

北アフリカ、アルジェリアで出会ったアフリカはキリマンジャロ山のある国、タンザニア人のアナ。先日アナ宅にてオバマ大統領の就任式のテレビを見た際のアナ、アフリカどうこうとやけに熱弁してたけど、正直半分も分からなかったよ・・・。来年はワールドカップも南アフリカで開催されるし、今年あたりからアフリカが来そうな(どこに?)気がする。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

異文化コミュニケーションって羨ましい体験だよね。

やっぱり人に羨ましがられる人になりたいものです。

ASYAさん羨ましいね。素敵ね。

ASYA さんのコメント...

アルジェさん

コメントありがとうございます。
そういうアルジェさんこそ、
既に羨ましい考え方の持ち主では?

どこにいても人とのつながりは大事にしたいものです。例えそれが文化を超えたものであっても。

ASYA