ホテルの敷地に入る際の玄関、アラビア語とアルファベットで書かれたSheraton Club des Pinsのセキュリティーガード。そのセキュリティーを抜けると、なだらかな坂が始まり、そのすぐ先には小さなロータリーがある。円形で、中は芝生が敷いてあるそれを左に見ながら前に進み、そのなだらかに続く道をどんどんおりていく。車ででも、歩いてでも、その道は、シェラトンホテルに入る人が必ず通らねばならぬ道。
そしてその前方、2、300メートル先には、緩やかにU字型になる道の右側に、中心部分にあたる正面玄関の回転ドアと、そのドア部分を軸に、左右対称に横に広がる巨大な建物がそびえ立つ。 そう、それがオテル・シェラトン。あまりに退屈なのか、ただ単に話好きなのか、その時々で違うドアマン、どのドアマンであっても、それが何時であっても、正面玄関に到着した私を見かけると、決まって必ず話しかける。そう、お互い意思疎通が難しいにも関わらず。
あるドアマンとは延々と天候の話をし、またあるドアマンとは休暇の話をする。中からは外の様子が伺えるとあれば、中にいるコンシェルジュも私を見かけ、用事もないのにそろそろと表へ出てくる。また別のドアマンとは、お互いアラビア語だのフランス語、はたまた日本語だののフレーズを教え合う。そうなるともう彼らも必死、開けると何も入っていないと思われる音を立てるガランガランのドアマンデスクの引き出しから、既に使用済みの紙一枚と、胸ポケットからペン一本が出てくる。そしてそこからプチ語学レッスンなんかが始まる。
でも時間帯によっては車の出入りが多いことも。
だから車が止まる度、私は思う。止まった車から人が降りてくる度、私は思う。
この人(ドアマン)、車のドアを開けなくて良いのだろうか・・・。
そしてまた思う。降りた人がトランクから荷物を持って降ろしているのを横目に、またまた思う。
この人(ドアマン)、トランクの荷物を出してあげなくて良いのだろうか・・・。
けれどドアマン、気にしない。どんどんどんどん話題を振ってくる。
分かった分かった私が悪かった。通りかかった私が悪かった。
そして思う・・・仕事しようよ。仕事をさ。
話に花を咲かせる、という言い回しがあるけれど、ここではどうやら話することが主であり、ごく稀に仕事に花を咲かせる人を見かける(笑)。
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