その外側、左側は通路、右側にはレセプション。
その先、螺旋階段の直裏辺りには、ラウンジが広がる。
先日、1001 Nuitsで踊り終えた私に、スタッフの一人が控え室にいる私に言う。衣装のことで私に話したい人がいる、と。
結局アルジェリア人のその人と話をしたのは1週間後(なぜ?)。多少英語が話せる女性。その場に居合わせた男性はおそらく彼女の旦那さんであろう。旦那さんはアメリカ人かな、と思わせる発音だ。彼女が英語が出来るのはそのせいなのだろう、と勝手な憶測を立てる。
その彼女、以前ベリーダンサーをやっていて、自分が持っている衣装を売りたいと言う。もちろん私はそのものを見なければ買うか買わないかなんて決められない、と言い、それなら、と携帯番号を交換した。
彼女曰く、じゃあ明日持ってくるから11時PM頃電話するね。
そして翌日。
電話は・・・
ない。
分かった分かった、当てにした私が悪かった。ここの国の人たちは悪気なく約束をすっぽかす。おそらく、すっぽかしたという認識さえないのだろう。もしくは約束は約束に値しない・・・。
じゃあ次の日ぐらいには電話があるかな、と思いつつ過ごしたその日も、連絡は・・・ない。
結局彼女から次のアプローチがあったのは1週間後。
今来てるんだけど、ロビーに来れる?ってあんたねぇ。何でそう都合良く、とは思いつつも、タイミング的にはばっちりだったので外出から帰ったその足でロビーに出向く私。
ここでは見せられないから、と女性化粧室に手を引っ張られる。袋の中から取り出されたのは、黒の衣装一着。
話では衣装は3つと聞いていたのだけど、他の2つは?と問う。
一番良いやつだから、とりあえず今日はこれだけを持ってきたの。ねえどう?
ちょうど黒の衣装を欲しいとは思っていたところ。悪くはない。
ただここは交渉スキルの見せどころ。いいとか悪いとか言う前に、まずは値段の交渉。どっちにしろ手直しはしなきゃいけないのだから、いくらまでなら手間隙掛けても使いたいと思うかどうか。
アルジェリアの通貨はディナール(DZD)。1ディナール1.6円ほど。硬貨は、一番小さいものが1ディナール、5ディナール、10ディナールと続く。100ディナール出せば輸入品の良質チョコレート菓子が2個ほど買える。大きな買い物はやはりドルだのユーロだので話をすることが多い。ここは地理的にヨーロッパに近いので、大体皆ユーロで話をする。が、私のペイは何故かアメリカドル・・・。
ちなみにレバノンではレバニーズポンドがあるのだけれど、アメリカドルも普通に流通していて、レートも一定の$1ドル=LL1,500(レバニーズポンド)。レートが変わらないところがまた曖昧で素晴らしい。なので大きなお金で買い物した際のおつりは、レバニーズポンドとアメリカドルが混ざっていたりするのも日常的な事。
300ユーロ(5万円弱)という彼女。500ユーロ(約8万円)で買ったのよ。
嘘でしょ。これを5万で売ろうとするその精神が分からない。
どう考えてもちょっとそれはやりすぎ。それでは、と私。デザインは取り立てて珍しくもないし、年季が入っててそこまでは出せない、しかも色々手直しが必要だよね、と言う。お互いここは売りたい者と、買いたい者。慎重に?話を進める。
結局最終的な値段は決まらないまま、サイズが合うかどうかをとりあえず部屋で試着するという事で衣装を預かりその場を後にした。
翌日連絡が来ることになってはいたのに、もちろん連絡は来るはずもなく、そのうち日々刻々と過ぎてゆく。なんたるいい加減さ。内心、これなら何回かショーで使ってやっぱり要らないわ、ってことだって出来ちゃうぞ(もちろんそんなことしませんが)、しかも私が衣装を持って去る可能性だってないことはない(これもしませんがね)、と思ったりしてみる。
そして2週間ほど経ってしまったある日、例の彼女から電話が鳴る。
今日残りの2着の衣装を持ってきたの、見てみない?
ちょうど仕事が終わっていた時間帯、ロビーに出向く私。小さなスーツケースから取り出した残りの衣装2つを簡単に見せてくれる。私は次の1ヶ月内には仕事の関係でドバイに行くから、欲しいかどうかを今この場で決めて欲しいという彼女。ああ、旦那さんの仕事?と問う私に彼女、私結婚してないわよ。なんだ、この前一緒にいた人が旦那さんなのかと思ってた。でも、何の仕事?とは聞かず。
この2つの衣装は最初の黒いものに比べて多少見劣りはするものの、手直しすれば問題なく使える。そう、私が目的としていたのは、使えそうなものであれば、3ついっぺんに買い取って全部をまとめて値段交渉するということだったはず。そしてそれを思い出す。じゃあ3つ買い取るとして、1つ150ドル(約1万5千円)の計算でどう?
という提案に彼女、二つ返事でOKを出す。こんな簡単に。しまった。それならもっときちんと交渉すれば良かった、と思うときにはもう時既に遅し。
まあいいか。
端数の金額をディナールで渡すことにした私は、持っていたお金を両替しにレセプションまで行く。
そこでレセプションで働いてる友達が私に妙なことを言う。
ねえ、一緒にいたあの人にお金とか大事なものとか預けちゃダメだよ。
別に何も預けてないけど、何で?彼女のこと知ってるの?
彼女は売春婦で信用が置けないから、と言う。
はーーーーーーーー。そうなの?だってさっき仕事でドバイに行くって。言ってからハッと気付く。確かに売春婦はドバイでもin demand?でもなんでそんなこと知ってんのさ?
そのレセプションの友達の男の子は、欧米人の男性がレセプションの前を横切ると、あの人はお客さんの一人、と言う。別の男性が横切ると今度はまた小声であの人も、と言う。
知ーりーたーくーねー。ほら、あの人も。通り過ぎるそのおじさんににっこり笑って挨拶しつつも、彼もビッグなお客様だよ、と彼。
ってあんた、教えんでいい!
話はどんどん盛り上がり(彼の中だけで・・・)、要らん情報を流してくれる。ラウンジの方向を指差して、あのラウンジの一角に一人で座っている女性がいあれば、それ系の人だという。やーめーろー。全く。聞いてないことをベラベラと。
って言うよりそれ個人情報めちゃくちゃ開示してるじゃないか。いけませんよホテルの職員がそんな。
結局3つの衣装を総額450ドルで入手。お互い手を振ってその場を後にした。
その後もちょくちょく、いや、週末になると毎回のようにレストランとクラブに出入りする彼女。もちろんもう顔見知り。お互い名前だって知っている。そのうち友達も連れて現れるように。クラブで踊るときには端の方だけれどこちらをじっと見ている。うれしいんだかやりずらいんだか・・・。ファンなのか、仲間なのか・・・。
この一連の衣装購入から早2ヶ月ほど、未だに、彼女はいる。ドバイはどうしたのよドバイは。
そんな訳で色んなジャンルの友達が出来つつある今日この頃・・・。
0 件のコメント:
コメントを投稿